前回まで「電気容量」「排水」についてお話しましたが、今回のツボは「B工事」です。

テナントビルで内装工事を行う場合、工事の種類によってルールが異なる「工事区分」というものがあります。
その区分は主に3種類に分かれており、それぞれ「A工事(甲工事)」「B工事(乙工事)」「C工事(丙工事)」といいます。

工事区分

「A工事」とはビル側がビル側の費用負担においてテナント区画としての基本スペックを最低限用意する工事です。
たとえば、区画壁や出入口のサッシ、電気の分電盤、水道の元栓、などです。

「C工事」とはテナント側がテナント側の費用負担において行うテナント区画内の内装工事です。
たとえば、各部屋の間仕切りや照明器具、什器などです。

わかりにくいのが「B工事」なのですが、「B工事」とはビルの指定会社が工事を行い、テナントがその工事費用を負担する工事のことを言います。例えば防災設備として天井に設置する「火災報知器」です。この設置工事などは「B工事」となることが一般的です。特にクリニックの場合、部屋が細かく分かれますので、この火災報知器が各部屋に設置することになり、それなりの増設が必要となります。

「火災報知器」のほかにも「非常照明」「スプリンクラー」などの工事もこれにあたります。
また、ビルによっては「空調・換気工事」「給排水工事」もB工事の対象になっていることもあります。

こうしたビルの防災設備や空調設備などは、ビル全体の設備のシステムに大きく影響する工事なので、テナントごとの内装業者に工事させるのではなく、ビルの指定会社が統括して行うことを原則とするようにしているわけです。

そして、なぜこの「B工事」が大事なのかというと、物件の規模や種類によってこの「B工事」のボリュームに大きな差があるからです。大型ショッピングセンター内や大型オフィスビル内のテナントの場合、この「B工事」にあたる工事が多岐にわたり、また工事も大手ゼネコンが行うことが多いので費用が高額になる傾向があります。

さらにやっかいなことに、このB工事の見積は賃貸借契約後になることが多く、また指定会社という縛りがあることから金額交渉もあまりできないので、プロジェクト予算が大きく押し上げられる可能性があります。

ただ、一方で集客効果の高い大型施設ほど、こうしたB工事は必然的に発生しますで、長期的に考えれば必要なイニシャルコストと考えることもできます。ですので、物件選定の際はB工事の有無や範囲などを確認して、想定される予算計上と中長期的な収支予測を踏まえたうえで判断する必要があります。