ばんぶう201506

開業医向けの雑誌「クリニックばんぶう」6月号の特集記事「患者が喜ぶ待合室」の解説記事を担当しました。
同内容を↓に転載します。少しよくばりなアドバイスになっていますが是非参考にしてみてください。

 

①レイアウト・家具の配置
まず心がけたいのは、「人の視線」を意識したレイアウトです。患者同士が向かい合って座るようなレイアウトは避けたいところ。さらに、トイレから出てくる人や玄関から入ってくる人と座っている人の目が合わないようにするのも快適に過ごしてもらう秘訣の一つです。また、待っている患者と受付スタッフが対面してしまうレイアウトも避けるべきでしょう。というのは、混み合って長時間待たされている場合「対面=対決」の構図に陥りやすく、患者が敵対心を持ったり、イライラしやすくなると考えられるからです。同じように、診察室の扉が開いたときに待合室の患者と診察している医師の目線が合わない配慮も必要です。
また、ゆったりと座れるだけでもストレスを軽減できるので、座席数は余裕を持って確保したいものです。このときに1つ気をつけたいのが、車いすの方のスペース確保。気軽に動かせないソファーばかりにしてしまうと、車いすで来院された方が受付のすぐ前や入り口付近などの空いたスペースで待たなければならず、居心地の悪い思いをすることになってしまいます。すぐに移動できるいすを適切に配置して、多くの人に快適に過ごしていただける空間づくりを心がけましょう。

②素材・色調
使用する素材も快適な待合室には重要な要素の1つです。たとえば壁材はビニールクロスが一般的ですが、当社が手がけた診療所では、珪藻土の塗り壁材を使用しました。落ち着いた雰囲気になるだけでなく、天然素材のためアレルギーを持つ人にも好評です。素材を厳選することで患者さんにとっての付加価値となっている事例といえます。
床材も重要。安価で手入れも楽な塩ビタイルを用いるのが一般的ですが、足音が響くのでハイヒールを履いた女性の歩く音が具合の悪いほかの患者さんを不快にさせてしまうこともあります。タイルカーペットであれば問題はクリアできますので、さまざまな条件を踏まえて検討したいところです。
色調についてですが、あまり複数の色を使うのはおすすめしません。開院後に設置する植物や掲示物など“色は後から増えるもの”と認識し、あまりごちゃごちゃしないように注意したほうがよいと思います。

③診療科目による工夫
小児科では、キッズスペースの確保が必須。入り口付近は避け、おもちゃや絵本などもそのなかで収まるスペースを設けると、大人とのすみ分けもできます。
整形外科やリウマチ科など、痛みを伴ったり動作に制限のある患者さんがかかる診療科では、身体の沈んでしまうような柔らかいソファーはかえって立ち上がる際の苦痛につながってしまうことが考えられます。そのため、硬めのソファーを選び、身長に合わせて選べるように複数の高さのものを用意しておくといいと思います。
小児科や耳鼻科など、円滑なオペレーションのために中待合室を設けたほうがよい診療科もあります。診察室の声が聞こえやすい空間のため、ドアを開き戸にするなどプライバシーへの配慮も不可欠です。

患者が最も長く滞在する待合室は、診療所の姿勢が患者に伝わりやすい空間です。反対に、この環境づくりによっては患者にホスピタリティーを伝えることもできるということです。季節ごとに植物やディスプレーを変えるとそれがコミュニケーションのきっかけになることもあります。ぜひ、自院のホスピタリティーを待合室から伝えてみてください。